文章力養成コーチ・松嶋有香さん 第9話 「教育と学習環境づくりを並行に…」

文章力養成コーチ・松嶋有香さん

あっちだ!っていう光が見えてきた。


001 松嶋有香 さん

文章力養成コーチ・文章コンサルタント
プロフィール
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第9話 「教育と学習環境づくりを並行に…」

NHKの教育番組「にほんごであそぼ」の世界にどっぷりハマるうちに、「日本の文化や伝統に根ざした日本語教育をやりたい!」とひらめいた松嶋さん。
あっという間に、ネットとFAXを融合させたオンラインの国語塾を開講!
アイデアが次々湧き起こる松嶋さんのこと。
さて、どんな授業をやっているのかを根掘り葉掘り…。

さんぽ屋:ゆかさんの教材は他社のと比べると、どこが違うんですか?

松嶋:1年間、毎日の分が用意してあるってことかな。

さんぽ屋:毎日の分なの!?

松嶋:そう、毎日分。土日は休みにしてるんだけど、毎日ある。1日当たり10分程度でできるようなA4サイズ1枚の教材。それを、毎日続けてもらうの。

さんぽ屋:内容の違いは?

松嶋:私の教材は、作文がメイン。漢字や知識は家で学んでくれれば全然問題ないので、それらはヒントとして出題してるだけ。
作文の授業はゴールとして、6年生の時には時事問題について意見が言えるレベルにしてあげることを考えています。なぜかっていうと、中学受験をする子は、、受験に出るから時事問題を無理やり習うんですよ。でも時事問題って本来、無理やり習うもんじゃないでしょ。原発のことや地震、自然破壊のこととかって家族の中でなんとなく話題になるものでしょ。
だから家族の中で話題になるようなネタをふってあげて、家族で話をして、資料を見ながら意見をまとめて作文として書く、っていうことを6年生でできるようにしています。そのゴールから逆算して、途中で反抗期も計算に入れつつ教材を作りました。

まず1年生では短文づくり。2年生では、もうちょっと長い100文字とか200文字の自分の考えを入れた文。3年生はもっと長く書けるようになって、4年生は「オチをつける」ことをテーマに、4コマ漫画を作文化させてるんです。4コマ漫画を元に、それにオチを入れて言葉で説明してもらいます。
4年生の後半からは、たとえば「100万円当たったら何に使うか?」とか「透明人間になったら何をしたいか?」っていう意見文を書かせる。5年生からは、家族のことや地域のことを考えさせて、6年生からは日本と世界のことを考えさせるっていう流れを作っています。

さんぽ屋:全体の流れがあるんだ。
こうして聞いていくと作文の指導がメインだし、肩書も「文章力養成コーチ」と「文章コンサルタント」ですよね。そういう意味では、やっぱり文章力の養成をしていることがメインなの?

松嶋:子どもの学習環境づくりと並行してですね。
子どもの力は教材でちょっとずつ鍛えていけばいいんですけど、いちばんネックになるのは実は親なんですよ。親が教育のじゃまをしがちなんです。
教材をやらない時にはバツを与えたり、怒ったり。ちゃんとやれた時にほめないくせに、やれない時に怒っちゃう。できなかったところだけに目を向けちゃう。私も親なので気持ちはわかるんですけど、やっちゃいけない。

さんぽ屋:それって、自分の子育ての中で気づいたの?

松嶋:子育てでの気づきもあったけど、親がうまくやれない気持ちは、子どもに教えている中でのほうがよくわかるな。
だから親には「私もそうでしたよ」って言いながら、「なるべくそういうのやめようね、怒るのやめようね」って伝えてます。そういうことを少しずつ浸透させないと親が変わらないから、いくら子どもが真面目に努力しててもかわいそうだなと思って。教育と学習環境づくり、それぞれを並行でやるのがいいなと思っています。

さんぽ屋:学習環境づくりも並行でやる方法論って、何かで気がついたの?

松嶋:結局、私の講座に申し込むのは、子どもじゃなくて親なんですよ。
子どもたちに「こうしてね」っていうのを授業のサイトに書くんですけど、読むのは親子でなんですよね。子どもが一人で私のページにログインするわけではないから。
どうせ親を通すのなら親も教育して、そこで理解してもらったことが子どもにいくようにしてあげたいと思ってます。
学校だと子どもを直接励ませるけど、インターネットの教育って子どもを直接励ませないんですよ。「がんばってね」って赤で書いても、時には親が余計なひと言を加えたりするんです。「ほら、先生、またここを間違えてるって言ってるよ」とか。私が書いたことは無視して、「ここはこうしたほうがいいよ」って注意しちゃったりする。親って、間違えたところにばっかり目がいっちゃうのよね。
そうじゃなくて、できている所がいっぱいあるので、そっちをほめてあげてほしい。むしろ私が厳しいことを書いてたら、「ゆか先生って厳しいね。がんばろうね」って子どもの味方になってあげてください、って思う。その構図のほうがけっこういいんですよ。

さんぽ屋:そんな思いを伝えるのは、親への手紙とかで?

松嶋:親は困った時には頼ってくるので、それにちゃんと応えてあげて、その時にその話を添えてあげていますね。そうすると説得力があるかな。いきなり、「だいたい最近の親は…」って私が言っても反感を買うだけなので(笑)

さんぽ屋:そういう時じゃないと聞かないかぁ。

松嶋:人の話って、なかなか聞けない。でも、人間って普通そうですよね。いくら説教する人がいても、うるさいなって思うじゃないですか。
でも、ほんとに自分が困ってる時に親身に相談に乗ってくれた人が、「これからはこうするといいよ」って言ってくれたら、それは聞きますよね。タイミングを狙ってるわけではないですけど、人間ってそうなのかなと思って、伝える時は伝えやすいタイミングを選んでいます。

さんぽ屋:親によっても違うから、みんなに同じように「こういうことやりましょう」って言っても届かないんだろうね。

松嶋:届かない。だから教育相談もやっていて、生徒のお母さんたちからは、ほんとに個人的な悩みが届きます。簡単な悩みから複雑な悩みまで届くんですけど、それにちゃんと答えてあげることで聞く耳を持ってくれるの。その時に、私の理論をちょっとだけ添えてます。

さんぽ屋:その理論って、そういう経験の中でわかってきたの?

松嶋:だんだんわかってきたものですね。やっぱり二十歳そこそこの女じゃわかんないですよね。子どもを産んだり、教育現場を経験して…。あと相談を何回も受けることですよね。
毎週、最低1通は深すぎる相談があります。簡単な相談はいっぱいあるんですよ。「先生、“む”って、なんでこんな形してるんですか?」とかね(笑) そういう面白い質問もあるんだけど、「兄弟でどうしても差をつけてしまって、一番上のお兄ちゃんには厳しくなってしまう」とか…。

さんぽ屋:それに答えられるんですか?

松嶋:心理学を勉強していたので答えられますね。それに最近はインターネットの情報がすごくて、最新の学術論文を検索できるんですよ。

さんぽ屋:学術論文かぁ…。やっぱりママブログとかのレベルじゃダメ?

松嶋:「発言小町」とか「Yahoo!知恵袋」とかでもたまにはいいのがあるし、最近は子育てフォーラムみたいなので先輩ママが答えているのがあっていいんだけど、やっぱり専門家のちゃんとした研究ってのはすごく重要。
先輩ママのアドバイスでも気は楽になるんだけど、「やっぱりうちの子には当てはまらないわ」ってことばっかりなの。
それだったら学術論文を読み解いている先生のブログを見て、自分の子はどれに当てはまるのかを考えたり、それこそ、その先生たちに直接相談して、ちゃんと答えを得たほうがいい。そこでさえ間違うことがあるから。知恵袋とかって結局、親の気が楽になるだけなんですよね。

さんぽ屋:やっぱり、ちゃんと研究した人の話を聞いたほうがいいんですね。

松嶋:ほんと、そうですよ。
そういう情報って、なかなか本にはならないんですよ。書店の本棚を見てもらえばわかるんだけど、最近は育児書のところは、◯◯大に子どもを二人入れたママの体験記とか、「そんなことあなたにしかできないよ」っていう理想論的な本がたくさんあって。そのほうが売れるから並ぶんですけど、学術論文を読み解く人がいないんですよね。
それをやりはじめたのが教育学者の齋藤孝さんと、ジャーナリストの池上彰さんかな。お二人とも教育のことをお茶の間に届けた人。

さんぽ屋:そんなもんなんですね。だから、学習環境づくりも大事になるのかー。使命感を感じるのもわかるな。

(つづく)

オンラインの国語塾で子どもたち、親たちと夢中になって授業を続ける日々。
やがて、そんな日々にも、また新たな出会いが起こります。
それは、経済評論家・勝間和代さんと彼女が主催する「勝間塾」との出会い。
ここから、また新たな展開が生まれます。
明日に、つづきます!

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