あっちだ!っていう光が見えてきた。
001 松嶋有香 さん
文章力養成コーチ・文章コンサルタント
プロフィール
プロローグのようなもの
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話
第11話(最終回)「あっちだ!っていう光が見えてきた」
さんぽ屋:これからは、どういうふうにしていきたいんですか?
松嶋:まず自分がある程度は力をつけなくちゃいけないとは思ってるんだけど。力と知識をたくわえて、チャンスが来たときにポジションをわーっと変えられたらいいなと見てるのね。
さんぽ屋:どういうこと?
松嶋:たとえば、尾木ママとか予備校の林修先生とか、ああいう人ってずーっと蓄積してきたものがあるからブームが来たときにハイ!って感じで力を出せたと思うの。
さんぽ屋:なるほどね。
松嶋:尾木ママだって、「あなた、それじゃダメよ」ってずっと言ってきたと思うの。いまは全国レベルの発言力になったけど、あれって、何か来た時に答えられるものを持ってたからだと思うのね。
私はいま来られてもあんまり出せるものがないんだけど、もうちょっと力をつけて、「どうですか?」って街角でインタビューされたら、ばーっと答えられる感じまで経験をたくわえたいな。
さんぽ屋:もう「私に聞いてよ!」って状態じゃないの?
それもあって、「OTONA SALONE(オトナサローネ)」で大人向けにコラムを書いてるんだと思ってた。
松嶋:それはともかく…。もともと私は文章を書く人ではなくて、人が書いたものを添削はするけど、自分で生み出して書く人ではなかったの。自分で作った「にほんごであそぼ」のファンサイトでは書いてたけど。あそこでは番組の教材についての文献を集めて、「こういうことですよ」って紹介したり、難しいお話を小学生に「こういうことですよ」って書いてた。伝えるのは好きだったから。でも、そこには自分の意見はあんまり入らないわけ。
さんぽ屋:あー、そうなんだ。
松嶋:ずっと伝えるだけの人だったから。かみくだいてあげるだけで、自分で考えたことを書いたことはなかったんだけど、「生徒に書けー、書けーって言ってるのに、自分で書いてないのはおかしいですよね。これからは文章を書きまくろうと思います」って勝間塾のコミュニティに投稿して、それからコミュニティ・ネームも「書きまくるゆか」にしたの。
さんぽ屋:それまでは「書きまくるゆか」じゃないんだ…。
松嶋:前は、「ゆか」。ただの「ゆか」だった。
さんぽ屋:「ゆか」しかなかったの? フツー!(笑)
松嶋:アハハハ(笑) もう一人、「ゆか」さんがいたので、「これからは、書きまくるゆかです!」って宣言して名前を変えたのが勝間塾に入塾して半年か1年ぐらい。
さんぽ屋:その時から、自分も書くようになったんだ。
松嶋:書けるようになるために、勝間塾のコミュニティで書く練習をしようと思って、毎日投稿を続けるようになったんですよ。
さんぽ屋:続けることから始まったんだ…。
松嶋:毎朝2時間かけて、書く内容と構成をよく考えて投稿を書くことをずーっと続けていたら、だんだん書けるようになってきて。「あれ、アタシ書けんじゃない」みたいになって。
それまでにブログみたいなのは少し書いてたけど、おしゃべりみたいな感じで書くのと、「私は今日は、これを言うぞ」ってテーマを決めて意見を書くのでは全然違うじゃないですか。日記だったら面白おかしく書けるんですよ。だいたい面白おかしい人生なんで。
さんぽ屋:そうかもしれない(笑)
松嶋:ねー(笑)。日々の出来事もどんどん面白くなってるから、そこらで見つけたものからネタを拾って書くことはできるんだけど、勝間塾のメルマガのテーマにそって意見を書くっていうのは全然違う。それを1年間ぐらいやったら、書けるようになりましたね。
さんぽ屋:それにしても、最近のゆかさんは、すでに世界が広がってますよね。
「OTONA SALONE」のコラムもそうだけど、PR会社「サニーサイドアップ」の創業者で「おせっかい協会」会長の高橋恵さんの活動会長の高橋恵さんのことを伝える活動を始めたり、中学生向けに手帳での時間管理を教えている話とか、周りから見ると、いろんなところに一気に広がってる気がする。
松嶋:そうねー。この間も同窓会の時にそんなふうに言われたんだけど、きっと肩書を捨てたのが良かったんだと思う。
「国語教師」を捨てたの。「文章力養成コーチ」って肩書は、塾生の友だちが考えてくれたんだけど。例えば、私が「国語教師です」って言ってしまうと、みんながそれまで経験してきた国語教師を思い出して、「あんな感じの仕事してるんだな」って思っちゃうんだけど、でも実際は全然ちがうじゃないですか。
それこそ、「学習環境を整える仕事をしてます」って言ったほうが近いと思うんです。親へのアドバイスとか教育相談とか、カウンセリングを含めて全部、子どもの学習環境を整えることにつながってる。将来の日本を良くするみたいな、そういう大きい意味での環境を整えてる。だから、肩書を捨てたのは良かったですね。中学生の手帳の企画を始めたのも、子どもたちのためになると思ったからなんですよ。
さんぽ屋:つながってるんだ。
松嶋:中学生が時間管理をできるようになったら強いですよ。
中学校の先生の友だちも多いんで、静岡に帰った時に話をしたんだけど。中学生って、中学の3年間は部活と勉強で終わっちゃうんですって。感受性が豊かな時に、本当はいろいろ体験できるはずなのに、ほぼほぼ全員の中学生が部活と勉強で3年間を棒に振ってしまう。
たとえば、小学6年生の男の子に家庭科を教えて、「家の仕事を分担しよう」って教える。で、宿題として朝ごはん作る日とか、お弁当を作る日を作って家事をさせるわけですよ。1年間かけてそういうのがやっと定着した頃に、中学校に入ったら部活と勉強漬けになっちゃって家の手伝いしなくなっちゃうんですよ。
でも本当に要領のいい子とか時間管理のできる子は、部活も勉強もして、空いてる時間に家族のためにも時間を使うわけ。そういう子が本当に成績がいいんだっていう話を教師の友だちがしてた。
「OTONA SALONE」」のコラムは大人向けの教育ですけど、そのほかの高橋恵さんの道徳の話にしても子どもに教えたいことだし、今はとにかく子どもの将来のためにいいことだったらなんでもするよっていう感じ。
さんぽ屋:聞きながら考えてたんだけど、それは、やっぱり自分の少女時代のことがあるから、子どものために何かしてあげたいみたいな思いがあるのかな?
松嶋:たぶんね。ほぼ母子家庭のような単身赴任家族だったから。
さんぽ屋:それって「暗黒時代」の話?
松嶋:「暗黒時代」の話。(※第1話)
さんぽ屋:あともう一つ面白いなと思ったのは、自分が変わっていってるから、子どもたちにも「「ひとは変われる」っていうことを伝えられたりするんじゃないかな。「変われるよー!」みたいな。
松嶋:まだやってないですけど、いじめられてる子がいたら「大丈夫よー」っていうのは言えるかなと思ってる。
さんぽ屋:そういうことがあるからなんだ…。なんで、そんなに子どものために一生懸命なんだろうって思ってたけど。だって、それミッションでしょ、たぶん。
松嶋:若い頃はどうでもいいと思ってたんですけど、自分が子どもを産んで、自分よりも大切ものができた時に、日本の将来のことを考えるようになったんですよ。
子どもがいないうちは、自分が死んだら日本がどうなったっていいと思ってたんですよ。自分が死んだら関係ないじゃないですか。息子ができた途端に、この子が死ぬまで日本が無事でというか、まともな国であってほしいなって思うようになりましたね。
さんぽ屋:それは、やっぱり母親だね。
松嶋:母親は強いと思いますよ。この子が無事な日本でいてほしいなっていう思いはすごく強くなりましたよね。
さんぽ屋:それを広げていくと、子ども全般になる?
松嶋:うん。日本の将来なんてどうでもよかった人なんだけど、いまは考えるようになった。
さんぽ屋:そこから日本の将来にまで行くんだ。なんかすごいね。あんまりすごい話にしたくないんですけどね。なんかいい話だよねー(笑)
松嶋:(笑)
さんぽ屋:ゆかさんを知ってる人は、このインタビューを読むと余計に面白いだろうけど、ゆかさんを知らない人にもすごく面白いだろうと僕は思ってて。
人って、みんな面白いよね。そういうのが感じられる良いインタビューとかっていっぱいあるじゃないですか。大学の時に沢木耕太郎の作品に触れて、彼に憧れて一時期ノンフィクションライターになりたいなぁってなって。だけど、「これ、よっぽどじゃないと食えないな」って気づいて、コピーライターになったんだ。
松嶋:アハハハ(笑)
さんぽ屋:それなのに、今はまたインタビュー記事をやりたいと思ってて。
松嶋:そういうふうに原点に戻っていくのは何なんでしょうね。
さんぽ屋:ゆかさんは原点に戻ってる感じ?
松嶋:戻ってる感じですね。
さんぽ屋:今で言うと、どこが原点なの?
松嶋:私の世界が広がってるように感じるかもしれないけど、実は私は研ぎ澄まされてる感じがしてる。
さんぽ屋:へー。
松嶋:手は広げていってるんだけど、あっちだ!っていう光が点になってちゃんと見えてきたっていうか。日本の未来、って言っちゃうと気持ち悪いんだけど、なんかあっちだなっていうのがわかってきた。だから違うことは捨てられる。
さんぽ屋:それに関係ないことは捨ててるんだ。
松嶋:面白そうなのは飛びつくけど、やめたプロジェクトもいっぱいあるし。
さんぽ屋:そうなんだー。あっちだ!っていう光が見えてきたのかー。
ノンフィクションだったら「彼女には、もう光が見えている。僕はそう思った。」みたいな感じでシメて終えるんだろうけどなー(笑)。この「ちまたのスゴイひと。」ってシリーズでは、そういうふうなキレイなまとめにしないようにしようと思ってて。まとまりがないままに「もう止めますか。ブチ」みたいな。
松嶋:ハハハハ。それは面白いかも(笑)
さんぽ屋:僕のブログのコンセプトは「楽しいことを見つけにいく」だからさ。あそこでの記事はしんみりとかマジメにじゃなくて、「なんだ、こんな人もいるんだ。私も、僕もそんなふうにやってみようかな」って心が軽くなるというか、ちょっとした勇気がもらえるみたいなのがいいと思っていて…。
…あ、だめだ。話がずれてって、もっと長くなっていっちゃいそう(笑)
これ、ぜったい切りがないから、もうやめましょう。おしまい!!
松嶋:(笑)
(完)
【編集後記】
実は原稿では、インタビュー後に数行の感想のコメントをつけていました。
僕が松嶋さんのインタビューで感じたこと、みなさんに感じてもらいたかったことを、それとなく。
でも、やめました。
松嶋さんの「半生記」に、僕は感じてもらいたいことがあったんですよー、とだけ書いておきます。
みなさんそれぞれが、それぞれに感じていただけるところがあったら、うれしいです。
長い長いおしゃべりにおつき合いいただき、ありがとうございました!
ああ、面白かった!!!